「保険者によるレセプトの審査・支払」等について

    「保険者によるレセプトの審査・支払」について、「規制改革推進3か年
   計画(改定)」(平成14年3月29日閣議決定)に従い、本日付けで

     「健康保険組合における診療報酬の審査及び支払に関する事務の取扱いについて」
   (平成 14年12月25日付け保発第1225001号厚生労働省保険局長通知)を発出
   し、健康保険組合自らが診療報酬の審査及び支払に関する事務を行うこと及
   び当該事務を社会保険診療報酬支払基金以外の者に委託することが可能であ
   る旨を通知しました。
      個人情報保護の重要性に鑑み、併せて、
      「個人情報保護の徹底について」(平成14年12月25日付け保発第1225003号
      厚生労働省保険局長通知)及び
     「健康保険組合における個人情報保護の徹底について」(平成14年12月25日付け
      保保発第1225001号厚生労働省保険局保険課長通知)を発出しましたので、
      お知らせいたします。

                                                       保発第1225001号
                                                       平成14年12月25日
                                                       
  健康保険組合理事長 殿
                                                      厚生労働省保険局長


 健康保険組合における診療報酬の審査及び支払に関する事務の取扱いについて

  健康保険組合における診療報酬の審査及び支払に関する事務については、「健康
 保険組合における診療報酬の支払に関する件」(昭和23年8月21日保発第42号各都
 道府県民生部保険課長宛厚生省保険局長通知)により、社会保険診療報酬支払基金
 に委託するよう指導してきたところであるが、今般、同通知を廃止するとともに、
 「別添1」のとおり取り扱うこととしたので、ご了知願いたい。

(別添1)

     健康保険組合における診療報酬の審査及び支払に関する事務の取扱い要領

1 健康保険組合等による審査及び支払

 (1) 健康保険組合は、特定の保険医療機関(以下「対象医療機関」という。)
     と合意した場合には、自ら審査及び支払に関する事務を行えること。また、この場
     合、健康保険組合は、当該事務を社会保険診療報酬支払基金(以下「基金」という。)
     以外の事業者(以下「事業者」という。)に委託することも可能であること。なお、
     その再委託は行わないこと。
(2) 健康保険組合は、対象医療機関との合意内容等につき組合会に諮るとともに、
     当該医療機関の名称等を規約に明記すること。(「別添2」の「健康保険組合規約
     例(昭和36年6月23日保発第38号)」の改正を参照のこと。)

2 対象となる診療報酬請求書

(1)  健康保険組合が自ら審査及び支払に関する事務を行う場合(1の(1)により
    事業者に委託する場合を含む。)には、下記(2)に掲げるものを除き、対象医
    療機関で受診した当該健康保険組合の被保険者及び被扶養者(以下「被保険者等」
    という。)に係るすべての診療報酬請求書を対象とすること。
(2) 老人医療及び公費負担医療(社会保険診療報酬支払基金法(昭和23年法律第
    129号)第13条第2項又は第3項に規定する事務に係るものをいう。)に係
    る診療報酬請求書の審査及び支払に関する事務については、従来どおり、基金が
    取り扱うこと。

3 公正な審査体制

(1) 健康保険組合は、健康保険法(大正11年法律第70号)第76条第4項(同
     法第110条第11項において準用する場合を含む。)の規定に基づき、保険医
     療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)及び健康保険法
     の規定による療養に要する費用の額の算定方法(平成6年厚生省告示第54号)
     の規定に照らして適正な審査を行うことが必要である。このため、審査対象とな
     る各診療科について十分な知識と能力を有する医師又は歯科医師(以下「医師等」
     という。)等に審査を担当させるなど適正な審査を行える体制を確保すること。
(2) 対象医療機関の医師等が審査を行ってはならないこと。
(3) 健康保険組合が審査及び支払に関する事務を事業者に委託する場合には、当該
     事業者は本要領によって健康保険組合に求められる適正な審査体制を確保すると
     ともに、健康保険組合は必要な指導監督を行うこと。
(4) 健康保険組合は、対象医療機関から診療報酬請求書の作成を委託されている者
     に、審査及び支払に関する事務を委託してはならないこと。
     なお、対象医療機関から診療報酬請求書の作成を委託されている者と実質的に
     同一又は子会社等とみなされる場合も同様であること。
(5) 地方厚生(支)局は、地方社会保険事務局との密接な連携の下に、健康保険組
    合又は事業者の審査の適正を確保するため、審査の基本方針や審査状況(査定率、
    査定理由など)について、健康保険組合に対し、必要な報告を求めるなどの指導
    監督を行うものであること。

4 個人情報の保護

(1) 健康保険組合においては、被保険者等の個人情報が漏えいしないよう、万全を
     期すること。このため、服務規程等において職員の守秘義務を明記するとともに、
     個人情報に関する取扱責任者を定め、個人情報の取扱いに関し、漏えい、滅失又
     はき損(以下「漏えい等」という。)の防止その他個人情報の保護のために必要
     かつ適切な措置を講ずること。
(2) 健康保険組合が診療報酬請求書の審査及び支払に関する事務を事業者に委託す
    る場合においては、当該事業者は、本要領により健康保険組合に求める個人情報
    の保護に関する措置をとることが必要である。健康保険組合は、当該事業者にこ
    れらの措置を適切に行わせる責任を有するものであり、当該事業者に対し、必要
    な指導監督を行うこと。
    なお、委託契約上に、事業者が個人情報の漏えい等をした場合の損害賠償や契
    約解除に関する規定を明記すること。
(3) 以上を含め、個人情報の保護については、別に定める「個人情報保護の徹底に
    ついて」(平成14年12月25日保発第1225003号当職通知)及び「健
    康保険組合における個人情報保護の徹底について」(平成14年12月25日保
    保発第1225001号厚生労働省保険局保険課長通知)に従い、その徹底を図
    ること。また、これに反した場合には、健康保険組合に対し必要な行政処分を行
    うとともに、違反した健康保険組合又は事業者の公表を行うものであること。

5 紛争処理ルールの明確化

    審査内容に関する見解の相違や支払の遅延など審査及び支払に関する紛争の発生に備
    え、支払期日を明確にするとともに、紛争が生じた場合の処理ルールについて、健康保
    険組合と対象医療機関の間で、あらかじめ具体的な取決め(例えば、審査結果について
    当事者間で合意が得られない場合には審査に携わる医師以外の中立的な医師による調整
    に従うこと、事業者の支払が遅延した場合には健康保険組合が支払うこと等)を文書に
    より取り交わすこと。

6 その他

(1) 地方厚生(支)局においては、健康保険法第27条、第29条の規定等に基づ
     き、健康保険組合に対し、必要な審査体制、個人情報の保護、その他の状況につ
     き適宣報告を求め、必要な指導監督を行うものであること。
(2) 対象医療機関は、保険医療機関である以上、すべての被保険者を平等に取り扱
     うべきであり、また、健康保険組合は、患者のフリーアクセスを阻害することが
     あってはならないこと。

(別添2)
    略


                                                    保発第1225003号
                                                    平成14年12月25日
健康保険組合理事長 殿
                                                  厚生労働省保険局長

                     個人情報保護の徹底について

  健康保険組合においては、医療保険事業の運営に当たって、被保険者やその被
  扶養者(以下「被保険者等」という。)の診療情報をはじめ個人情報を取り扱
  うことが少なくないが、健康保険組合は、被保険者等の個人情報の漏えい等が
  生じないよう、その適正な管理に万全を期さなければならない。このため、健康
  保険組合に対しては、これまでも、被保険者等の個人情報の保護について指導
  してきたところである。
  しかしながら、情報処理技術の高度化や外部委託の普及等に伴い、被保険者等
  の個人情報の管理については、従来にも増して慎重かつ適正を期すことが必要
  となっている。このため各健康保険組合においては、役職員に対する守秘義務
  の厳守や違反に対する厳正な対応、個人情報の取扱に関し責任を有する者の明
  確化や個人情報へのアクセス制御など個人情報に関する管理体制の強化等を図
  るとともに、外部の業者に業務を委託する場合には、健康保険組合として必要
  な管理監督を行うなど、被保険者等の個人情報の保護の徹底を期されたい。


                                                   保保発第1225001号
                                                   平成14年12月25日
健康保険組合理事長 殿
                                              厚生労働省保険局保険課長

              健康保険組合における個人情報保護の徹底について

    健康保険組合においては、医療保険事業の運営に当たって、被保険者やその被
    扶養者(以下「被保険者等」という。)の診療情報をはじめ個人情報を取り扱
    うことが少なくないが、健康保険組合は、被保険者等の個人情報の漏えい等が
    生じないよう、その適正な管理に万全を期さなければならない。このため、各健
    康保険組合に対しては、「健康保険組合事業運営基準」(昭和35年11月7日
    保発第70号厚生省保険局長通知)等により、被保険者等の個人情報保護の徹
    底が図られるよう指導してきたところである。
     しかしながら、情報処理技術の高度化や外部委託の普及等に伴い、被保険者等
    の個人情報の管理については、従来にも増して慎重かつ適正を期すことが必要
    となっている。
     このため、今般、厚生労働省保険局長より各保険者等あて「個人情報の徹底
    について」(平成14年12月25日保発第1225003号・122500
    4号厚生労働省保険局長通知)が通知されたところであるが、健康保険組合と
    して遵守すべき事項について、別添のとおり「健康保険組合における個人情報保
    護に関する遵守基準」として定めたので、遺憾のないよう取り扱われたく通知する。

   別添


             健康保険組合における個人情報保護に関する遵守基準


1.制定の趣旨

    健康保険組合(以下「健保組合」という。)においては、健康保険事業の
    性格上、診療情報や資格・給付情報など被保険者(被扶養者及び被保険者又
    は被扶養者であった者を含む。以下「被保険者等」という。)の個人情報を
    取り扱うことが少なくない。
     被保険者等の個人情報の漏えいは、そのこと自体、個人の人格尊重の理念
    に反し被保険者等の権利利益を侵害する行為であり、健保組合は被保険者等
    の個人情報保護に万全を期さなければならない。また、個人情報の漏えい・
    紛失・改ざん・誤記録等(以下「漏えい等」という。)は、被保険者等と健
    保組合、あるいは被保険者等と医療機関等の信頼関係を損ない、健康保険事
    業の円滑な運営等に支障を生じさせることにも留意する必要がある。
     本基準は、上記のとおり個人情報保護の重要性にかんがみ制定するもので
    ある。したがって、本基準は、単なる指針ではなく、健保組合が被保険者等
    の個人情報保護に関して遵守すべき基準である。本基準の履行は、健康保険
    法(大正11年法律第70号)に基づく指導監査等を通じ徹底を期すもので
    あり、これに反する場合には必要な行政処分を行うものであることに留意さ
    れたい。
      また、健保組合が被保険者等の個人情報に関する処理を外部の業者に委託
    する場合には、当該業者も本基準の遵守が求められるとともに、健保組合は
    当該業者にこれを遵守させる責任を有するものであり、適切な指導監督を行
    うことが必要である。

2.対象となる個人情報

    本基準は、以下のような健保組合における被保険者等の個人情報について
    適用する。なお、紙に記載されたものであるか電子計算機・光学式情報処理
    装置等(以下「電子計算機等」という。)のシステムにより処理されている
    ものかは問わない。
      1)診療報酬請求書等及びこれを基に作成される文書(医療費通知等)
      2)保健事業として行う各種健診等の記録
      3)資格記録(資格取得・喪失年月日、標準報酬・賞与額等)
      4)給付記録(現金給付受給内容、口座番号等)
      5)被保険者記録及び被扶養者記録

3.個人情報保護に関する管理体制

 (1)守秘義務規定の整備

      服務規程等において、健保組合の役職員について守秘義務を課すこと。
      また、退職した後も守秘義務があることを明記すること。なお、守秘義務
      に反した場合には、懲戒等の処分の対象になるとともに損害賠償の責を負
      うことを服務規程等に明記すること。
       また、健保組合の役職員の採用に当たっては、個人情報保護の重要性等
      について理解し遵守の徹底が図られるよう必要な研修等を行うこと。

   (2)個人情報取扱暮佳肴の設置

      理事長は、本基準の内容を十分理解し実践する能力のある役職員のうち
      から個人情報取扱責任者を選定し、その業務を行わせるものとすること。
       個人情報取扱責任者は、個人情報保護の徹底が図られるよう、健保組合
      の役職員に対する教育訓練、各種安全対策の実施、個人情報に関する開示
      請求や苦情処理、外部委託業者の監督等を適切に行い、理事長など役員と
      ともに、その責任を負うものとすること。

   (3)個人情報の管理

      個人情報を電子計算機等により処理する場合には、特定の役職員以外の
      者が個人データにアクセスできないようパスワードを設けるなど適切な措
      置を講じること。また、故意又は過失による虚偽入力、書換え及び消去が
      できないよう電子計算機等のシステムの構築を図るか、又は、これに代わ
      るべき管理上の措置を講じること。
        個人情報の紙による保管管理に当たっては、盗難、紛失、不正利用等が
      生じないよう施錠など十分な措置を講じること。

   (4)個人情報の消去

      電子計算機等を用いて個人情報を管理している場合であって、その電子
      計算機等の廃棄又は転売・譲渡等(リース等の場合は返却)を行うに当た
      っては、電子計算機等に記録されているデータを消去し、復元不可能な状
      態にしなければならないこと。
        なお、電子計算機等を初期化しデータの消去を行う方法では、ハードデ
      ィスクのデータを完全に消去することはできず、復元される可能性がある
      ことから、ハードディスクを物理的に破壊するか、最新のハードディスク
      データ消去ツール等を使用する又は電子計算機等のデータ消去を専門に取
      り扱う業者に委託する必要があること。
        また、個人情報の記載された紙を廃棄する場合においては、シュレッダ
      ーにかけるか又は溶解するなど、個人情報を読取不可能な状態にしなけれ
     ばならないこと。

 4.個人情報の処理に関する外部委託に関する措置

     健保組合が被保険者等の個人情報に関する処理を外部の業者に委託する場
     合には、個人情報保護に関する十分な管理能力を有する者を選定することと
     し、理事会に諮ること。
       また、外部の業者に委託する場合にあっても、当該業者が本基準に掲げる
     事項を遵守するよう委託契約書上明記するとともに、個人情報に関する処理
     における個人情報の管理状況等について適宜検査を行うなど、健保組合は必
     要な指導監督を行うこととし、個人情報の漏えい等があった場合には、契約
     解除はもとより債務不履行による損害賠償できる旨の規定を置くこと。
       なお、個人情報に関する処理を複数の業者に委託する場合には、健保組合
     はそれぞれ直接、委託契約を締結し、各業者が本基準に掲げる事項を遵守す
     るよう、上記の措置を講じることとし、健保組合との直接の契約関係を伴わ
     ない再委託は禁止すること。

5.個人情報の管理に関する監督

    厚生労働省は、健保組合等の個人情報の保護について指導監査等を通じ徹
    底を期すとともに、健保組合等における個人情報の管理に違反があれば、そ
    の態様等に応じ、健康保険法第27条、第29条の規定等に基づき、健保組
    合に対し、必要な処分等(業務改善命令、役員の解任、組合の解散、違反し
    た委託業者に対する損害賠償請求や契約解除の指導・命令など)を行うとと
    もに、違反した健保組合や委託業者の公表を行うものであること。