労災診療費算定基準の一部改定について 平成16年4月7日 日本医師会 健康保険診療報酬点数表等の改定が本年4月1日に実施されることに伴い,労災診療費算 定基準における健康保険準拠項目及び労災特掲項目が一部改定されることとなり,厚生労働 省労働基準局長及び労働基準局労災補償部補償課長より,関係機関に対し別紙のとおり通知 されましたのでご連絡申し上げます。 今回の改定の概要は下記のとおりであり,本取扱いについては4月1日以降の診療に係る ものから適用されるものでありますので,関係会員への周知方ご高配賜わりたくよろしくお 願い申し上げます。 なお,例年本会が作成しております労災点数表r労災診療費算定基準』については,出来 上がり次第各都道府県医師会あてにお送りするとともに,本会ホームページに掲載する予定 としておりますので,ご了承のほど併せてお願い申し上げます。 記 1.初診料 現行 3590円 → 改定後 3640円 入院部分など略 6.消炎鎮痛等処置 @ 消炎鎮痛等処置(「マッサージ等の手技による療法」及び「器具等による療法」)に係 る点数は,負傷にあっては受傷部位ごとに,疾病にあっては1局所(上肢の左右,下肢の 左右及び頭より尾頭までの躯幹をそれぞれ1局所とする。)ごとに,1日につきそれぞれ 健保点数を算定できる。 ただし,3部位以上又は3局所以上にわたり当該処置を施した場合は,1日につき3部 位又は3局所を限度とする。 なお,消炎鎮痛等処置(「マッサージ等の手技による療法」及び「器具等による療法」) 理学療法を同時に行った場合は,理学療法の点数と,消炎鎮痛等処置(「マッサージ等 の手技による療法」及び「器具等による療法」)の1部位(局所)に係る点数をそれぞれ 算定できる。 A 介達牽引に係わる点数の算定は、上記@に定める消炎鎮痛処置(「マッサージ等の手技 による療法」及び「器具による療法」)に係わる点数の算定と同様とする。 ○ 上記取扱いは,健保改正により,従来,消炎鎮痛等処置の「器具等による療法」に含ま れていた介達牽引が,独立した処置として算定できるようになったことに伴い,介達牽引 について文言整理を行ったものであり,その取扱いは改定前と変わるものではない。 なお,介達牽引の併施等の具体的な取扱いは次のとおりである。 (1)介達牽引と消炎鎮痛等処置(「湿布処置」,「マッサージ等の手技による療法」及び 「器具等による療法」)を同一日に異なる部位(局所)にそれぞれ行った場合は,湿布 処置の所定点数の他に,介達牽引,「マッサージ等の手技による療法」及び「器具等に よる療法」のうち計2部位までの所定点数を併せて算定できるものである。 なお,この場合,「湿布処置」の所定点数を算定することなく,介達牽引,「マッサ ージ等の手技による療法」及び「器具等による療法」を合計で3部位まで算定すること として差し支えない。 (2)介達牽引と理学療法を同一日に行った場合は,介達牽引の1部位と理学療法の所定点 数を算定できる。 また,介達牽引と理学療法の他,消炎鎮痛等処置「マッサージ等の手技による療法」 及び「器具等による療法」を同一日に行った場合は,理学療法の所定点数に介達牽引, 「マッサージ等の手技による療法」又は「器具等による療法」のいずれか1部位を算定 できる。 さらに,介達牽引と理学療法の他,消炎鎮痛等処置(「湿布処置」,「マッサージ等 の手技による療法」及び「器具等による療法」を同一日に行った場合は,理学療法の所 定点数と「湿布処置」(1部位に限る。)の他,介達牽引,「マッサージ等の手技によ る療法」又は「器具等による療法」のいずれか1部位を算定できる。 なお,この場合,「湿布処置」と理学療法の所定点数を算定することなく,介達牽引, 「マッサージ等の手技による療法」及び「器具等による療法」を合計で3部位まで算定 することとして差し支えない。 ○ 介達牽引及び消炎鎮痛等処置については,健保改正により「急性発症した脳血管疾患等 の疾患の患者」で発症後1 8 0日以内のものについては,逓減制が緩和された。(介達牽 引及び消炎鎮痛等処置(「器具等による療法」及び「湿布処置」)について,同一部位に つき,同一月において併せて5回以上行った場合は,5回目以降については所定点数の 100分の50に相当する点数により算定することとしてきたが,健保改正により.「急性 発症した脳血管疾患等の疾患の患者」であって,発症後1 8 0日以内のものについては, 7回以上行った場合は,7回目以降については所定点数の100分の50に相当する点数 により算定することとなる。) ○ 介達牽引の部位(局所)について,レセプト上明確に記載する。 7.リハビリテーション 発症の日から起算して6月以内の期間において,リハビリテーション料のうち,個別療法 又は集団療法を行った場合については,健保点数表に定める患者1人につき1月の合計単位 数の逓減又は制限を行うことなく算定できる。 発症日から6月を超える日以降の期間は次のとおりである。 イ 個別療法は1月に11単位目以降のものについて,所定点数の1 0 0分の70に相当 する点数により算定する。 なお,この場合の四肢加算は1単位ごとに逓減したのちの所定点数に四肢加算の倍率 を乗じるものとする。 ロ 集団療法は1月合計8単位に限り算定する。 注)個別療法は,傷病労働者1人につき1日3単位に限り算定できる。 集団療法は,傷病労働者1人につき1日2単位に限り算定できる。 @ 発症日から6ヵ月以内の期間においては,疾患にかかわらず健保点数表に定める逓減又 は制限を行わないものである。 A 既に発症日から3ヵ月を超えて逓減又は制限を行っていたものについても,平成16年 4月1日以降の診療について,発症日から6ヵ月以内の期間は逓減又は制限を行うことな く算定できるものである。 B 発症日については,健保点数表に定めるリハビリテーションの発症日と同様に取扱う。 (つまり,「急性発症した脳血管疾患等の疾患の患者」のうち,開腹術・開胸術後,脳腫 瘍など関頭術後,脊椎・肩甲骨・関節の手術後及び植皮術後であり,理学療法が必要と認 められる患者にあっては,当該手術の日をもって新たな発症日とすることができる。) なお,発症日が傷病年月日と異なる場合にあっては,その発症日をレセプトに明記する。 8.早期リハビリテーション加算 急性発症した脳血管疾患等の疾患の患者に対して,リハビリテーション計画を作成し,当 該リハビリテーション計画に基づき,理学療法(V)程度の「個別療法」及び言語聴覚療法 V の個別療法を行った場合は,次に掲げる区分に応じ,早期リハビリテーション加 算として,それぞれ次に定める点数を健保点数表における理学療法(V)及び言語聴覚療法 (V)の所定点数に加算して算定できる。この場合において,入院中の患者に対し,病棟等 において早期歩行,ADLの自立等を目的とした個別療法を行った場合は,1単位につきさ らに30点を健保点数表における所定点数に加算する。 なお,当該加算の対象疾病については,健保点数表における「早期リハピ ̄リテーション加 算」において定めているものと同様とし,四肢加算については上記加算前の点数を基礎とし て算定する。 イ 発症後14日以内に行われた場合(1単位につき) 1 0 0点 ロ 発症後15日以上30日以内の期間に行われた場合(1単位につき) 80点 ハ 発症後31日以上90日以内の期間に行われた場合(1単位につき) 30点 ○ 健保改正において,早期リハビリテーション加算の対象に,言語聴覚療法(I)及び(H) が追加されたことに伴い,労災保険における早期リハビリテーション加算においては,理 学療法(V)及び(W)の医療機関についての特例取扱いに加え,言語聴覚療法(V)に ついても早期リハビリテーション加算の対象とした。 なお,理学療法(W)を算定する医療機関においては,従来どおり,「急性発症した脳 血管疾患等の疾患の患者」に対して,リハビリテーション計画を作成し,当該リハビリテ ーション計画に基づき,理学療法(V)程度の「個別療法」を行った場合は,理学療法(V) の個別療法の所定点数(1単位につき1 0 0点,傷病労働者1人につき1日3単位に限り 算定)に早期リハビリテーション加算の点数を加算して算定することが可能であり,この 場合,レセプトにリハビリテーション計画書の写しを添付して請求する。 [早期リハビリテーション加算の対象疾患] 脳血管疾患,脊髄損傷等の脳・脊髄(中枢神経)外傷,大腿骨頚部骨折,下肢・骨盤 等の骨折,上肢骨折又は開腹術一関胸術後の患者,脳腫瘍などの開頭術後,急性発症し た脳炎・ギランバレーなどの神経筋疾患,高次脳機能障害,脳性麻紙四肢(手部・足 部を含む。)の骨折・切断・離断・腱損傷,脊椎・肩甲骨・関節の手術後,四肢の熱傷 (II度の熱傷では体表面積15%以上,V度の熱傷では10%以上),気道熱傷を伴う熱 傷,多発外傷及び植皮術後であり,理学療法が必要と認められる患者をいう。 9.独立行政法人等と労災診療単価 平成16年4月1日より労働福祉事業団,国立病院及び国立療養所が独立行政法人に移 行し,国立大学病院が国立大学法人に移行するが,当該法人は法人税法別表第1に定める 公共法人であることから,当該法人が開設する医療機関の労災診療単価は11円50銭で 算定するものである。