■看護師等の静脈注射を容認
厚労省5O年ぶり解釈変更へ
厚生労働省は24日の「新たな看護のあり方検討会」(座長=川村佐和子・東京都立保健科学大教授)に静脈注射は看護職員の業務外としていた行政解釈について約50年ぶりの変更を提案、了承された。法解釈と実態との乖離、看護職員が静脈注射を行うことへの医療施設や在宅での二一ズが高まっていることなどが変更に至った理由。これを受け区政局看護課は、年内にも「看護師等が静脈注射を実施できるものとする」との改定医政局長通知を都道府県に通達する。静脈注射を安全
に行うためのガイドラインを作成するほか、看護職員の卒前・卒後教育内容で充実強化すべき点についても、関連通知などで併せて示す方針も明らかにした。
看護職員による静脈注射の禁止は当時の厚生省医務局長通知(医収517.1951年)を根拠としている。それによると、
(1)全身に薬剤が行き渡るのが早く、重い副作用を引き起こす危険性が高い
(2)技術的に困難
の2点から、静脈注射は医師または歯科医師が自ら行うべき業務であり、看護婦の業務範囲を超えると解釈された。
この日の会合では、事務局が「看護師等が静脈注射を実施できるものとする」との改定通知案を示した。解釈変更に至った理由としては、
(1)法解釈と実態との乖離がある
(2)医療施設や在宅での静脈注射への国民二一ズの高まり
(3)静脈注射に関する看護基礎教育の充実
(4)医療用器材の安全性向上と、手技の困難性の相対的な低下
の4点をあげた。実態との乖離を示す資料としては、「94%の医師が業務多忙などの理由で(准)看護師に静脈注射を指示」(回答者=勤務医)、「90%の(准)看護師が日常業務として静脈注射を実施」(同=病院看護管理者)など、2001年度厚生科学研究による調査結果が参考として示された。そのほか、国民二一ズの把握では、同じ調査で85%の訪問看護ステーション(ST)の管理者が、利用者は静脈注射を必要としていると回答したこともわかった。病院、訪問看護STの看護管理者は、いずれも法的な整備と教育の充実を静脈注射実施の前提条件にあげていた。 通知改定に伴って必要となる対応について、事務局は、看護基礎教育と病院内卒後研修を一層充実させる方針も提示。卒前教育では、薬剤の適用、禁忌など薬理学、インフォームドコンセント、静脈注射の実技、感染・安全対策を強化分野に位置づけた。一方、卒後の病院内研修では、与薬システム、感染・安全対策、救急時の対応などを個々の医療機関が集合研修などの場で徹底することが必要とし、関連通知で示す計画も明らかにした。
●「安全面での問題は生じない」と中村審議官
委員からは、卒後一定の猶予期問を経た後に、静脈注射を行うようにすべきとの意見や、静脈注射といっても多岐にわたるため看護職員が行う範囲を明確にすべきなどの指摘があった。中村秀一審議官は、すでに静脈注射が広く行われている実態があるため、安全面での問題は生じないとの個人的見解を示した一方、「厚生労働省としては、さまざまな説明や体制整備はしなければ いけないと思っている」と述べ、委員の指摘も参考に対応していく姿勢を示した。
7月25日 メディファクス 4006号