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■ 病院入院外2.71%減、診療所入院6.29%減
日医「緊急レセプト調査」最終報告

日本医師会の青柳俊副会長は21日の中医協総会で、診療報酬改定の影響度を測定することを目的に実施した「緊急レセプト調査」(4月診療分〜6月診療分)の最終報告を提示した。それによると、診療報酬単価の影響が表れやすい患者1人1日当たり点数(前年同期比)は、病院の入院0.64%減、入院外2.71%減、診療所は入院6.29%減、入院外1.53%減となったことがわかった。また、診療科別の1件当たり日数をみると、整形外科(入院外)は再診料の月内逓減制の影響を受けない「3日以内」に収まっているのは全体の20%程度に過ぎないことが明らかになった。
青柳委員は、整形外科(入院外)の1件当たりの点数や日数、1日当たりの点数のばらつきが大きいことをあげたうえで、「平均値だけで物事(診療報酬)を進める危険性」を指摘、医療機関の実態を把握せずに診療報酬改定の作業を進める手法を問題視している。
 今回まとめられた緊急レセプト調査の最終報告は、6月診療分までのデータのうち、調査データが全て揃っているなどの条件を満たした医療機関からのデータを集計、定点調査としてまとめた。客体数は病院520施設を含む4030件、レセプト総件数は1138万8025件。最終報告ではこれまで月ごとで公表してきたデータに加え、病院の病床規模別の1件当たり点数などの指標をまとめたほか、再診料逓減制の影響が懸念された整形外科に関して、指標の最大値、最小値のほか、数値の分布状況をヒストグラムとして示した。

●中小病院の入院への影響が顕在化
 総点数や総件数、総日数の対前年同期比をみると、総点数が3.86%減、総件数が2.13%減、総日数が3.81%減といずれもマイナスとなった。1医療機関ごとに指標を平均化せずに、総点数などの3つの要素をもとに、1日当たり日数などを単純計算すると、1日当たり日数は、病院の入院でO.52%増、入院外でO.71%減となるほか、診療所は入院3.25%、入院外1.74%のそれぞれマイナスとなる。病院の入院はプラスとなったものの、病床規模でみると100床以下の病院と200床以上300床未満の病院では減少している。とくに49床未満の病院では、入院が1.33%減少し、入院外も5.39%減となっているなど、今回の診療報酬改定が中小病院にとって厳しい内容だったことが表れた格好となっている。
 一方で、100床以上200床未満と300床以上の病院では増加するなど、施設ごとのばらつきも大きいことがわかった。 診療所について診療科ごとの患者1人1日当たり点数をみた場合、整形外科が6.37%減、血液透析を含む泌尿器科が5.32%減となっている。また、院内処方を実施している診療所の1日あたり点数は1.14%減に対し、院外処方では2.40%減となった。医薬分業を打っている診療所に影響が大きく出ている。

入院外/診療科別 (4月診療分から6月診療分)

資料: 日医緊急レセプト最終報告(pdf)


■改定率と実測値の乖離は4・86%、診療報酬再改定を要求 日医

  日本医師会の青柳俊副会長が21日の中医協総会に提出した緊急レセプト調査の「分 析結果と結論」では、総点数が3.86%のマイナスとなっており、昨年12月の予算編 成段階で見込んでいた医療費の自然増分(1%、国庫負担べース約700億円)との乖離 が「4.86%もの開き」を生じていると指摘、「思い切った国民負担の軽減」とあわ せ、「適切な診療報酬の再改定」を政府に求めている。診療報酬の再改定に関し ては再診料やリハビリテーション料の逓減制見直しの必要性を強調した。
「分析結果と結論」では、緊急レセプト調査結果に加えて、厚生労働省がまとめ ている医療機関メディアスや支払基金、国保中央会などのデータをもとに改定率 の検証を加えた。診療報酬改定率を「狭義の改定率」と定義した上で、医療技術 の高度化や高齢化などの要素を加味した自然増など医療費の増減分を「広義の改 定率」と位置付けた。
今年度予算のシーリングで医療費自然増など2700億円まで 圧縮された昨年末の段階で、老人保健拠出金の後年度負担分(約1000億円)と、公 費医療などへの支出(約1000億円)とを除いた約700億円(国庫負担べ一スで医療費 の約1%)が、広義の改定率にあたると定義した。その上で、マイナス改定の影響で 現実の医療費が「3.86%のマイナス」に転じ、広義の改定率との格差が4.86%にま で拡大したことで、「医業経営に重大な問題を招来している」と指摘した。
 今回改定ではとくに、総点数が減少、診療所(法人全体)では34.4%の減益となる ほか、医療法人病院では利益額が49.3%落ち込むとのシミュレーションも示し、1 0月以降の患者負担増や診療報酬の減額措置によって「このまま行けばわが国の医 療提供体制は間違いなく崩壊する」との危機感を表明している。総点数や総件数 の落ち込みは、医療制度改革に関する「制度改正による患者負担増」の報道が、 国民心理に作用したのではないかとの分析も加えている。
 狭義の改定率からみた「今回の改定の影響」については、「無視できない程バ ラツキが大きい」との問題意識を示した。診療所に対しては、入院・入院外とも に影響が大きいとしながらも、整形外科を中心に「入院外に重い」影響が出てい るとした。 また、整形外科に関しては、1件当たり日数で再診料の逓減を受けない3日以内に 収まるケースは「わずか20%程度に過ぎない」ことなどを問題視。このほかの1日 当たり点数や1件当たり点数でも施設ごとの「正規分布をしていない」ことをあげ、 「正規性の検証なく、再診料やリハビリテーション料の逓減制を導入したことは 根拠がなかったといえる」などとも指摘。医療機関ごとの「分布などの実態」を 把握せずに、単純に平均値をベースに点数を設定したことが、整形外科への影響 を大きくした原因と分析している。

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