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■SARS(重症急性呼吸器症候群)について

 昨年11月中国広東省で異型肺炎の報告があり、注目を浴び始めたのは今年2月下旬、上海・香港等を旅行したアメリカ人が、ベトナム・ハノイで体調を崩し入院し、3月上旬約20人の入院先の医療スタッフが同様の症状を示してからです。4月2日時点で世界18カ国に広がり、2,223名が発症、うち78名が死亡していますが、3月15日のWHOの緊急情報以来、孤発的な症例の報告のみで、二次的な集団発生は見られません。

 現時点での情報を要約すると潜伏期間は2〜7日で最大14日、主症状は38℃以上の高熱、痰を伴わない咳、息切れと呼吸困難で、胸部レントゲン写真で肺炎の所見を呈します。病原体は新種のウイルスである可能性が高いとのことで、3月24日のWHOのガイドライン改訂版は飛沫感染を念頭において作成されていますが、空気感染の可能性も否定されていません。しかし、感染性はインフルエンザ・ウイルスほど高くないようです。

 予防及び治療の為に推奨される薬剤は無く、抗生物質は無効です。インフルエンザ同様、抵抗力の落ちた方では重症化することも予想され、SARSの国内感染が報告されている中国、香港、シンガポール、ベトナム、カナダから今年2月1日以降に帰国された方は、少なくとも2週間、自分が感染源になりうることを念頭に、慎重な行動をお願いしたいと思います。

 現在、日本では医療機関の外来での感染拡大を防ぐ為に、SARS流行地の香港、中国広東省からの帰国者には、空港などで配布される「健康カード」を通じて感染が疑われる場合は、事前に医療機関に電話連絡をした上で受診するよう指導が行われています。

  これを受けて4月3日、日本医師会は都道府県医師会に対し、該当者から電話連絡を受けた場合、 
1)診察の順番を繰り上げるなどして該当者の待合時間を可能な限り短縮する、
2)一般の外来患者とは別の部屋で待機させる、
3)マスクを着用させる、
などの対応を講じるよう、会員医療機関に周知することを求めました。また、厚生労働省が同日、都道府県宛てに出した通知では、特定感染症指定医療機関だけでなく、第1種感染症指定医療機関などもSARS受け入れ先として考慮するよう指導していますが、第1種医療機関の指定も12病院に止まっている為、日本医師会はSARSが疑われる患者の受け入れ医療機関を早急に決定するよう、各都道府県医師会からも都道府県行政に強く働きかけるよう促しています。

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なお重症急性呼吸器症候群(SARS)に関連した情報は時々刻々と変化しています。最新情報に関しては以下のサイトをご参照下さい。
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1)日本医師会HP
http://www.med.or.jp/kansen/sars/
2)厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/03/tp0318-1.html
3)国立感染症研究所
http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/update.html
4)SARS(重症急性呼吸器症候群)の情報源:
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/7663/
5)世界保健機構(WHO)HPの関連情報 *英語
http://www.who.int/csr/sars/en/
6)米疾病予防センター *英語
http://www.cdc.gov/ncidod/sars/
7)東京都感染症情報センター
  SARSメニュー
8)東京都健康局
  SARS対策本部
 

 かかりつけ医通信    第52号   2003年4月5日より 一部改変
http://www.docbj.com/kkr/

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