■看護協会、看護師の静脈注射実施に関するガイドラインを配布 2003.5.15
日本看護協会はこのほど、看護師の静脈注射の実施に関するガイドライン「静脈注射の実施に関する指針」を会員向けに配布した。これは2002年9月6日に「新たな看護のあり方に関する検討会」がまとめた中間報告の趣旨に基づいて、同年9月30日、厚生労働省医政局長通知で、新たに「診療補助行為の範疇として取り扱う」として合法化されたことを受け、同年10月から、「静脈注射の実施に関する検討プロジェクト」を設置し、同協会が策定を進めてきたもの。
看護師が行う静脈注射については、1951年9月15日付けと同年11月5日付けの厚生省医務局長通知で、「看護師の業務範囲を超えるもの」とされ、以来、50年にわたって非合法とされてきた。しかし、現実には多くの看護師が静脈注射を実施している現状や、近年になって、訪問看護が普及し、医師不在の場での静脈注射(輸液など含む)も頻繁に実施されるようになってきたことから、実態に即した対応が求められていた。
ガイドラインでは、静脈注射を4つのレベルに分類し、そのうち、レベル1〜3を看護師が実施する対象と規定している。
レベル1は、看護師が自身の判断で実施できるものとして、緊急時の末梢血管確保と、異常時の中止、注射針(末梢静脈)の抜去を挙げている。
レベル2は、医師の指示に基づいて、看護師が実施できるものとして、水分、電解質製剤、糖質、アミノ酸、脂肪製剤、抗生剤などの静脈注射や短時間持続注入の点滴静脈注射、中心静脈カテーテル挿入中の輸液バッグ交換、などとしている。
レベル3は、医師の指示に基づき、一定以上の臨床経験があり、専門教育を受けた看護師だけが実施できるものとして、末梢静脈へのカテーテルの挿入や、抗がん剤など身体への影響が大きい静脈注射と点滴を挙げている。
そして、看護師が実施しないレベル4としては、切開や縫合を伴う血管確保やそのカテーテル抜去、中心静脈カテーテルの挿入と抜去、薬剤過敏症テスト、麻酔薬の投与を挙げている。
静脈注射の実施合法化は、看護師の職能と責任を新たに追加することであり、ガイドラインでは、上記のような実施基準自体に加え、管理方式、医師との責任分担、注射に関する教育プログラムなどについて提示している。
ガイドラインではさらに今後の課題として、1.看護教育が日常生活援助に重きを置き、診療補助技術の習得が十分でないこと、2.訪問看護において静脈注射を実施しても、看護師の手技料や管理料は加算されないこと、3.職能の拡大に見合う裁量権やサービスの質の向上とその支援体制が必要なこと、の3点を挙げている。
このガイドラインの全文は5月中に日本看護協会のホームページ上に掲載し、会員以外でもダウンロードできるようになる。また、同協会機関誌「看護」6月号にも全文掲載する予定だ。
nikkei MedWave 2003.5.15