●インフルエンザの予防接種について
特に今年はSARSの影響で世界のインフルエンザシーズンへの対策が変わりましたので、予防接種への関心が強くなっています。
なぜならば、この冬に再びSARSが世界中で流行しないという保障はなく、万一SARSが流行すれば、初期症状はインフルエンザと明確に区別できないからです。SARSウイルスの今後の動向は、現在の知見からは予想不可能ですが、ウイルスによる呼吸器感染症には、気温と湿度が上昇したときに死に絶え、その後気候が涼しくなってまた戻ってくる傾向があることがよく知られています。
従って、この冬のインフルエンザの流行がSARSの流行と重なれば「SARSの疑惑」を生じ易い時期でもあるからです。
重症例では肺炎を合併し、ハイリスクでは死亡率も高いインフルエンザの症状は、SARSの症状と混同し易く、同時に流行すれば鑑別に混乱するのは目に見えています。また、世界中の保健・医療システムがSARS「疑い例」や、その密接な接触者の隔離、接触者追跡調査、検疫といった費用がかかり、社会的にも大きな対策が必要となります。
初期段階でSARSを除外し、こうした対策の必要性を取り除く、迅速で簡易な診断検査はまだ存在しないために、より負担が重くなっていると言われています。
インフルエンザを予防する最も有効な方法は、毎年インフルエンザ予防接種を受けることであり、インフルエンザに対する予防接種の安全性・有効性は確かめられています。そのためにWHOはすべての国のインフルエンザとSARSの両方への罹患リスクが高い医療従事者に対して、予防接種を行うように勧めています。
そして医療関係者だけでなく、施設内で介護を受けている高齢者や、慢性の心血管系・呼吸器系疾患の患者、そのほか感染リスクがある人々にも、ワクチン接種が行われるべきですし、海外出張者や流行地に旅行しなくてはならない人にも行うべきだと思います。
インフルエンザワクチン接種によって、SARSと間違えられる肺炎症例の数を減少させることができると考えられます。
この様な事情から、今冬は特にワクチンの予防接種が勧められていますし、多くの方が接種を受けられると思います。
先日、日本医師会と厚労省は共同で「今冬のインフルエンザ総合対策について」(平成15年度)というホームページを開設し、一般向け・医療従事者向けに分かり易いQ&Aを公開しました。