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■一般診療所は14.O%減収、「一般病院の医業収支は37.3%減
03年医療経済実態調査

 
厚生労働省は26日午前に開かれた中医協・調査実施小委員会と総会に、医療経済実態調査の速報値を報告した。2003年6月調査の速報値では、介護保険事業収入のない一般診療所(無床)の1施設当たり医業収入は前回調査(01年6月)に比べて13.9%減少、医業費用も13.8%減となった。また、医業収支差は金額べースで黒字を確保したものの、前回調査に比べ14.O%の減収。給与費や医薬品費はともに2ケタの減少となるとともに、減価償却費の落ち込みも大きい。医業収支率は27.O%で前回調査と変わりがないが、人件費などの削減や設備投資の抑制で利益を確保していることが明らかになった。一方、一般病院(医療法人)については、回答客体の平均病床数が増加していることも背景に、医業収入、医業費用がともに増加。医業収入については34.6%、医業費用も38.O%それぞれ伸びたことから、医業収支差額は37.3%減少、対医業収支割合で2.2%となり、前回に比べて2.4ポイント低下した。
 介護保険収入のない一般診療所(無床)をみると、前回調査に続き医業収入、医業費用ともに減少。医業収入は前回調査比で117万4000円の減少(13.9%減)となった。医業費用は給与費(16.1%減)、医薬品費(12.3%減)などの圧縮で531万6000円となり、前回調査に比べて85万4000円(13.8%)減少した。ただ、医業収支については収入減が大きく響いたため14.O%減の196万6000円となり、200万円を割り込んだ。

●一般病院の医業費用は軒並み大幅増に
 一般病院(医療法人)では、調査集計客体の平均病床数が増加していることの要因に、入院収入が増加したこともあり医業収入は34.6%増加。一方で、給与費や医薬品費、診療材料費の伸びを背景に医業費用も38.O%増加。医業収支差額では黒字を確保したものの、前回調査に比べ収支差は199万5000円(37.3%)減少した。医業費用の内訳をみると、診療材料費や委託費の伸びを背景に、「その他」が46.2%と大幅に増加したほか、給与費34.9%、医薬品費31.4%、減価償却費42.3%とそれぞれ増加した。
薬剤施設整備等コスト(いわゆる薬剤管理コスト)と薬剤損耗経費のそれぞれについての調査から、1施設当たりの薬剤管理コストをみると、一般病院の平均は19万7000円(前回調査比50.4%増)で、対医業収入の0.1%、対医薬品費でO.4%を占めた。
薬剤損耗経費は9万1000円(同160.O%増)で、対医薬品費のO.2%となっている。一般診療所では薬剤管理コストが1万1000円(同26.7%減)で、対医業収入のO.1%、対医薬品費でO.7%だった。一方、薬剤損耗経費は1000円(同75.O%減)で、対医薬品費のO.1%となっていることがわかった。

11月26日 メディファクス 4331号-1


■ 医療経済実態調査速報値をめぐり診療・支払側双方から疑義
中医協調査小委

 

26日の中医協・調査実施小委員会では、厚生労働省が報告した医療経済実態調査(2003年6月分)速報値をめぐって、支払側、診療側から集計内容に関する疑義が相次いで示された。診療側の青柳俊委員(日本医師会副会長)は、回答率が前回調査に比べてもさらに低下していることを問題視。調査結果が適切に診療報酬改定に反映されないなど医療機関側の不信感から、未回答施設が多くなっているとの見方を強調した。支払側の対馬忠明委員(健康保険組合連合会常務理事)もデータの回収率が低いことや、今年4月の被用者本人3割負担実施による影響が医業収入にどう影響するのかを検討すべきとした。
 調査実施小委では、速報値の有効回答率が病院で55.7%、一般診療所で45.2%となるなど全体として低下傾向にあることに問題意識が示された。青柳委員は、回答率の低下で一般病院の回答施設の平均病床数が上昇し、医療法人立をはじめとした一般病院では医業収入が2割から5割増加しているとの結果が示されたことを指摘。そのうえで、02年の医療費動向では「医療機関の規模によってはマイナス影響が強く出ている」として、「1施設あたりで02年と03年の比較をすることはまちがいではないか」と疑義を示し、的確に前回調査と比較が可能な資料の作成、提示を求めた。櫻井秀也委員(日医常任理事)は、調査票の回収率で調査の精度が大きく変化する可能性をあげ、回収率が1か月単位でどのように変化し、月次の回収率の変化で調査結果がどのように変わってきたのかという資料が必要との考えを強調した。
 対馬委員は、今回初めて調査した回復期リハビリテーション病棟入院料などを算定している病院の集計結果について、当該の技術料が「どう収支に影響しているか」を分析できる資料の提示を要求した。また、平均病床数など集計対象が大きく変化した場合に、経営の合理化や効率化などが見えにくいことをあげ、事務局に資料の提示を求めた。

●一般病院の借入金返済額は収入の11.1%占める
 一方、速報値では借入金の状況が初めて示された。借入金総額(月額換算)は一般病院(医療法人)で7142万5000円、利息を含めた返済額は1719万4000円で、医業収入に占める返済比率は11.1%となっている。一般診療所は借入金合計が239万1000円。返済額は37万円という状況が明らかになった。
 青柳委員は調査結果をもとに、個人診療所(無床)の総収支差から所得税をはじめとする納税額、減価償却費、借入金返済額などを勘案すると、借入金返済後の収支差は131万4000円にとどまるとの試算を提示。このなかから退職給与引当金や建物設備、機械などの増改築、更新費用を捻出しなければならず、「借り入れのための(返済費用の)借り入れという悪循環になる。地域医療体制の崩壊につながる」と危機感を示すとともに、「医療安全のコストを十分に勘案したうえで、04年改定の引き上げが不可欠」と述べ、医業経営の安定化を主眼にプラス改定が必要との主張を展開した。

11月26日 メディファクス 4331号-1


■ 収支差と借入金返済の関係を分析、プラス改定は必須
日医が実調に関する意見

 

日本医師会は26日、「医療経済実態調査(2003年6月実施)速報値に関する意見」を自民党の21世紀の社会保障制度を考える議員連盟に加入する国会議員に配布した。
今回の速報値では医療機関の借入金の状況が初めて公表されたが、日産側が収支差と借入金の返済の関係について行った分析によると「借入金返済のために借入金を重ねるという悪循環に陥りかねず、医業経営の破綻、ひいては地域における医療提供体制の瓦解につながる恐れがある」と強調。さらに、高齢化や人口増があっても、実態の延患者数が伸びていない現状で、医療安全等に係る医療機関のコスト増が不可避な状況を勘案すれば、「適切な医療提供という観点から、2004年度診療報酬の引き上げが必須である」と結論づけている。
 日医側は医療機関が収支差額から借入金を返済していることに着目。個人立の医療機関では、従業員の退職金引き当てのための積み立てや、事業主本人の社会保険料・退職の際の積み立て、さらには医療機関の建替えや増改築、医療機器の購入や更新等のための再投資資金を積み立てなければならないことを示し、「収支差に注目するだけでは、医療機関の経営状況は把握できない」との見解を示した。そのうえで税引き後に借入金の返済等を行った場合の1施設当たり(介護保険収入なし)の総収支差額(月額)の変化について行った試算を示し、所得を得るどころか、資金不足を生じ、さらに従業員の退職給与引当金などの所要積立金が必要なことを考えると「資金不足は極めて深刻」と指摘した。
 具体的には、個人立一般病院の総収支差額は510万8000円だが、税率を45%と仮定すると、税引後の収支差と減価償却費分をプラスした借入金返済原資は427万2000円となる。これに対し、借入金返済額は707万4000円で、結果的に280万2000円もの資金不足が発生するというものだ。同様に、個人立有床診療所の総収支差額265万4000円、税率40%と仮定すると、借入金返済のための原資は197万円で、借入金63万4000円を返済すると収支差は133万6000円まで縮小。さらに、ここから所要積立金等を差し引かねばならず、可処分所得は極めて小さい額となる。個人立無床診療所についても、総収支差額219万8000円に対し、税引き後収支差と減価償却費を足しあげた借入金返済原資は149万6000円で、借入金18万2000円を返済すると、可処分所得は131万4000円から所要積立金を差し引いた額となる。これらから、医療法人立の一般病院と一般診療所についても、税引き後(税率・診療所30%、病院35%と仮定)の総収支差額に減価償却費を加えたものを借入金返済原資として試算すると「病院は大幅な資金不足、診療所も大幅に資金が縮小している」のが実態だとした。

11月27日 メディファクス 4332号


■医療経済実態調査速報値報道を比較 日医     

 日本医師会は27日、医療経済実態調査速報値についてマスコミ各社がどのような報道をしたかを整理した資料をまとめた。医療経済実態調査は診療報酬改定論議の基礎資料を得る目的で医療機関、保険薬局の収支を把握するもの。
個人経営の病院、診療所では収支差から税金、従業員の退職給与引当金、設備投資費用、院長自身の社会保険料などを差し引いたものが、院長の可処分所得となるが、毎回、個人経営診療所の収支差をそのまま「開業医の月給」と誤認する報道が目立ち、日医はマスコミ各社に是正を求めていた。
 
 日医がまとめた資料によると、今回は1紙が「2年で9・9%減少 227万円 開業医の月収」(読売新聞・27日朝刊)と見出しをつけたほかは、医療経済実態調査の速報値を客観的に報道している。なかには個人経営医療機関の収支差に設備投資費用が含まれていることを明記したケース(産経新聞・27日朝刊)もある。
 
 青柳副会長は「従来からみればマスコミに理解が広がっているのではないか」とコメント。ただ、速報値が報告された際の中央社会保険医療協議会(診療報酬について審議する厚労相の諮問機関)の審議内容そのものについての報道がなかったことには不満が残る、としている。
 
資料:11月26日の中医協医療経済実態調査速報値に関する各紙の比較

▽読売(11月27日朝刊)記事は結果を掲載するも、見出しは「2年で9・9%減 227万円 開業医の月収」と事実誤認。日医の引上げ主張と財務省の4%マイナス意向の両方を掲載。
▽朝日(11月27日朝刊)中医協資料に基づき結果を淡々と掲載。
▽毎日(11月26日夕刊)中医協資料に基づき結果を淡々と掲載。日医の改定幅の引上げ要求方針を掲載。
▽日経(11月26日夕刊)中医協資料に基づき結果を淡々と掲載。日医の引上げ主張に触れ、激しい綱引きになるとコメント。
▽日経(11月27日朝刊)解説記事で再度中医協資料を引用しながら、財政審の動向と医師会の主張を掲載。健保連の「今は診療報酬を引上げる環境にない」というコメントとともに、民間病院の医師の給与97万円を引用し、日本経団連の「少し減ったからといって大騒ぎしなくても」というコメントを掲載。支払側と診療側の調整は難航必至とコメントし、エコノミストの見方として、「横這いに近い小幅下げになるのでは」とのコメントを掲載。
▽産経(11月27日朝刊)中医協資料に基づき結果を淡々と掲載。収支差額には設備投資費用が含まれていることを明記。

JPN  2003-11-27 17:43:56

以上

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