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■初診料引き上げなど改定項目案を提示 中医協で厚労省

 厚生労働省は21日の中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)・診療報酬基本問題小委員会に、医科、歯科、調剤(薬局)の診療報酬改定項目案を提示した。医科では、検査料、画像診断料の中に含まれている検査試料など「もの代」に相当する部分を市場実勢価格に合わせて引き下げ、これによって浮いた財源を技術料の引き上げに充てる。初診料の引き上げのほか、看護職員の配置が厚い有床診療所(ベッド数が19以下の医療機関)を評価する入院基本料を新設する方向を打ち出した。
 
 現在の初診料は、病院250点(1点=10円)、診療所270点と、20点の差がある。改定項目案は、この格差を縮めつつ、病院、診療所の初診料をそれぞれ引き上げる考えを示した。再診料でも同様の見直しを実施。外来診療料(200ベッド以上の病院の再診料)を引き上げて診療所との格差を縮める
代わりに、包括する尿検査、糞便検査、血液形態・機能検査を増やす。 
 原則2週間以内とされていた投薬期間の制限が2002年に廃止され、1か月を超える長期間の投薬(長期投薬)が増えている。通院間隔が空き、生活習慣病などでは医師による指導・管理が今まで以上に重要になることから、糖尿病、高血圧性疾患などの患者に薬を出した時に処方料、処方せん料に上乗せして請求する「特定疾患処方管理加算」(現行:1回15点、月2回まで)を一部変更。「28日以上の処方」を行った場合、月1回を限度に所定の点数を請求する仕組みを入れる。
 
 入院基本料は看護職員の配置数によって段階的に設定されている。有床診療所でもっとも高い基準は「看護職員10人以上」だが、高齢入院患者の増加などに伴い看護業務も増えていることから、看護職員数がこれを上回る場合の入院基本料を新設。はしかなどにかかった小児を個室に入院させた時の「小児療養環境特別加算」を病院だけでなく、有床診療所でも請求できるようにする。
 
 各種診断料や指導・管理料、検査料、加算点数などに包括されている、検査試料、材料費など「もの代」部分を市場実勢価格に合わせて引き下げる。検体検査管理加算と画像診断管理加算(CT、MRIの撮影)は、もの代を下げた財源で引き上げを行う。
 
 基本小委の議論では、外来診療料の見直しについて青柳俊委員(日本医師会副会長)が、「再診料の見直しは非常に多くの財源が必要になる。この部分は(包括範囲の拡大で浮いた財源で引き上げを行う)財源中立という形で診療所との格差是正を図って欲しい」と要請した。
 
 また、特定疾患処方管理加算の見直しで対馬忠明委員(健康保険組合連合会常務理事)は、「こういった点数をつけることで患者がどんなメリットを受けるのかが見えない」と難色を示した。これに対して櫻井秀也委員(日医常任理事)は、「大変なことが起きたら大変。医師が大変なことが起きない範囲で(長期投薬を)やっているということだ。その医師の判断や管理を診療報酬で評価して欲しい」と話した。
 
【医科・診療報酬改定項目】中医協資料から作成
 

○加算で評価している材料、医療機器等の適正評価
 診療報酬上の加算のうち、医療材料や医療機器の評価をしているものについて、それらの市場実勢価格や使用実態を踏まえた評価の見直しを行う。
 
☆在宅自己注射指導管理料
  ・注入器加算等の見直し(注入器、注射針など)
  ・「注入器を使用している場合に算定」を「注入器を処方した場合に算定」へ変更
 
☆在宅酸素療法指導管理料(携帯用酸素ボンベ加算、設置型液化酸素装置加算など)
 
☆手術(自動縫合器、自動吻合器)
  手術毎の算定回数の見直しを行う。
 
○長期投薬に係る技術の評価
 処方料、処方せん料の特定疾患処方管理加算の算定要件の見直しなどを行う。
 
☆月2回に限り、1回15点を算定する現在の仕組みに加えて、主病に対して28日以上の処方を行った場合に、月1回に限り1回○点を算定する仕組みを新設。
 (特定疾患:悪性新生物、糖尿病、高血圧性疾患、慢性ウイルス性肝炎など)
 
○有床診療所における入院医療の評価
 現在、看護職員10人以上を有床診療所の入院基本料評価の上限にしているが、高齢化・患者ニーズの多様化に伴い、診療所においても入院時医学管理や、看護量の増加に対応するための厚い医師および看護職員配置が求められていることから、その評価を検討する。

 ☆有床診療所入院基本料において、医療従事者の配置に応じた新たな基準を設定。
 
 ☆有床診療所入院基本料を算定している医療機関においても、小児療養環境特別加算を算定することを可能にする。
 
 ☆入院患者に対する調剤技術基本料の病院との点数差について検討する。
 
○外来診療の見直し
 ☆初診料の評価を行うともに、病院・診療所における初診料の格差是正を行う。
 
 ☆200床以上の病院の再診については、再診時基本診療料の点数格差是正の観点から、一般的な検査について外来診療料における包括範囲を拡大し、併せて点数設定の見直しを行う。
 
○検体検査の適正化
 ☆検体検査実施料(基本的検体検査実施料)について、市場実勢価格を踏まえて適正化を行う。
 ☆検体検査管理加算1、2を引き上げる。
 
○生体検査、画像診断の適正化
 ☆生体検査は実施実態を踏まえた、算定要件の見直しを行う。
 ☆特殊CT撮影、特殊MRI撮影を引き下げ、画像診断管理加算1、2を引き上げる。
 
○検体検査料、薬剤料を含む包括点数の適正評価
 検体検査料、薬剤料に係る市場実勢価格に基づく点数の見直しに併せて、薬剤料、検査料を含む指導管理などの適正な評価を行う。
 対象:特定薬剤治療管理料、悪性腫瘍特異物質治療管理料、慢性維持透析患者外来医学管理料など。
 
○2001年1月の医療法一部改正で看護師等の配置基準が3対1に引きあげられたことに伴い、経過措置期間対象外の医療機関や経過措置期間終了後の医療機関が算定できる入院基本料等を明示する。
 
 ☆経過措置対象外の医療機関(一般病床200床以上)については、医療法を下回る区分の入院基本料は04年4月より算定不可とする。
 
 ☆経過措置は06年2月に終了するが、経過措置対象医療機関(一般病床200床未満)での医療法を下回る区分の入院基本料算定は06年3月まで可とする。
 
 医療法を下回る区分:入院基本料1群4(看護配置3・5対1)、同5(同4対1)
  

(JPN 2004-1-21)


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